今晩はtthgです。
夕刊フジが以下のように報じている。
莫大な落札金を懐に入れた西武には、松坂の引退の花道を飾ってやる義務があるだろう。
zakzak,2017年12月27日8時10分,西武は松坂に花道を メジャー移籍の入札金60億円を懐にした義務より引用,2024年1月24日最終アクセス
この記事はライオンズが松坂投手のポスティングで「莫大な落札金」(当時のレートで60億程)手にしたから、その恩返しとして花道を用意せよと主張する。そこで今回は「60億とエースのどっちが大事か」という観点から考えたい。松坂投手は移籍時点で26歳。4-5年は悪くて10勝、良ければ15勝の見込める投手だった。(実際は怪我でメジャー移籍3年目以降活躍できなかった。そう言いう意味ではライオンズは得をしたといえる面もある。ただし、メジャーの過密日程とボール、マウンドなどの環境変化による故障という側面もあるので、日本に残った場合に故障がいつ発生したかは微妙なところ。)問題は60億で同等の選手を獲得する可能性がどれだけあったかだ。以下は2006年以降2017年までにFA移籍した投手(ライオンズ以外)の一覧である。
年 | 選手 | 移籍元 | 移籍先 |
2006 | 門倉健 | 横浜ベイスターズ | 読売ジャイアンツ |
2006 | 岡島秀樹 | 北海道日本ハムファイターズ | ボストン・レッドソックス |
2007 | 石井一久 | 東京ヤクルトスワローズ | 埼玉西武ライオンズ |
2007 | 黒田博樹 | 広島東洋カープ | ロサンゼルス・ドジャース |
2007 | 小林雅英 | 千葉ロッテマリーンズ | クリーブランド・インディアンス |
2007 | 薮田安彦 | 千葉ロッテマリーンズ | カンザスシティ・ロイヤルズ |
2007 | 福盛和男 | 東北楽天ゴールデンイーグルス | テキサス・レンジャーズ |
2008 | 川上憲伸 | 中日ドラゴンズ | アトランタ・ブレーブス |
2008 | 上原浩治 | 読売ジャイアンツ | ボルチモア・オリオールズ |
2008 | 高橋建 | 広島東洋カープ | トロント・ブルージェイズ(マ) |
2009 | 藤井秀悟 | 北海道日本ハムファイターズ | 読売ジャイアンツ |
2009 | 五十嵐亮太 | 東京ヤクルトスワローズ | ニューヨーク・メッツ |
2009 | 高橋尚成 | 読売ジャイアンツ | ニューヨーク・メッツ(マ) |
2010 | 小林宏之 | 千葉ロッテマリーンズ | 阪神タイガース |
2010 | 建山義紀 | 北海道日本ハムファイターズ | テキサス・レンジャーズ |
2010 | 土肥義弘 | 埼玉西武ライオンズ | ランカスター・バーンストーマーズ(米独立リーグ) |
2011 | 杉内俊哉 | 福岡ソフトバンクホークス | 読売ジャイアンツ |
2011 | 和田毅 | 福岡ソフトバンクホークス | ボルチモア・オリオールズ |
2011 | 岩隈久志 | 東北楽天ゴールデンイーグルス | シアトル・マリナーズ |
2012 | 寺原隼人 | オリックス・バファローズ | 福岡ソフトバンクホークス |
2012 | 藤川球児 | 阪神タイガース | シカゴ・カブス |
2013 | 久保康友 | 阪神タイガース | 横浜DeNAベイスターズ |
2013 | 大竹寛 | 広島東洋カープ | 読売ジャイアンツ |
2013 | 中田賢一 | 中日ドラゴンズ | 福岡ソフトバンクホークス |
2014 | 成瀬善久 | 千葉ロッテマリーンズ | 東京ヤクルトスワローズ |
2015 | 髙橋聡文 | 中日ドラゴンズ | 阪神タイガース |
2016 | 山口俊 | 横浜DeNAベイスターズ | 読売ジャイアンツ |
2016 | 森福允彦 | 福岡ソフトバンクホークス | 読売ジャイアンツ |
2017 | 増井浩俊 | 北海道日本ハムファイターズ | オリックス・バファローズ |
2017 | 平野佳寿 | オリックス・バファローズ | アリゾナ・ダイヤモンドバックス |
これを見ると松坂投手の移籍した06年以降で松坂投手と同等の価値を見出せる選手は、07年の黒田投手と11年の杉内投手、和田投手ぐらいだろう。この三人でさえ年齢的な衰えのリスクを考慮すると、移籍時点の価値は松坂投手より劣る面もある。(黒田投手は驚異的に寿命が長い選手だったので実際は得だったが、統計学的なデータで言えば、リスクは高かった。)実績面だけで言えば、川上投手、上原投手、岩隈投手あたりも価値は高いがいずれも、移籍時点で故障がちというリスクがあった。(上原投手は、それでも長持ちしたが、移籍時点の故障リスクは高かった。)しかもこれらの投手は杉内投手を除いてメジャー移籍である。メジャー志望の場合は、お金だけで獲得できない場合が多いので、そもそも獲得機会があったかすら疑問である。ちなみに、上記の期間に宣言残留した投手は以下のとおりである。
年 | 選手 | 球団 |
2007 | 下柳剛 | 阪神タイガース |
2008 | 三浦大輔 | 横浜ベイスターズ |
2011 | 篠原貴行 | 横浜ベイスターズ |
2014 | 能見篤史 | 阪神タイガース |
2014 | 金子千尋 | オリックス・バファローズ |
こちらをみても06年以降移籍当時の松坂投手と同等の価値のある投手はいない。08年の三浦投手はこの年ですでに35歳で年齢リスクがあった14年の金子投手が実績的には該当するが、移籍時点で肘の手術のためにメジャーを断念したという状況だっただけに健康面の不安があったし、実際15年以降思うように活躍できていない。(なお、2018年に入ってから涌井投手がメジャーでの移籍先がなくロッテに宣言残留1した。2024年1月24日追記)
代替え案の一つはメジャーのFAでエース格を補強することだが、メジャーで実績のあるタイプは60億でも買えないし日本への適応リスクもある。もう一つは、エースではないが10勝ぐらいできそうな投手(今年の野上投手みたいな投手)を複数獲得することだが、こちらもこのクラスが2人FA市場に出回ることはまれだし、仮に奇跡的に2人獲得できても松坂投手に比べれば、グッズ販売力や集客力に劣るのであまり得ではない。
以上のように、60億をもとでに、チームの大黒柱的な存在を買ってくることは非常に難しい。それでもチーム力を落とさぬようにするには相当の工夫がいる。ダルビッシュ投手が抜けても勝ったファイターズや、黒田投手や前田投手が抜けても勝ったカープがいるから絶対に無理とは言わないし、ライオンズも来るべき菊池投手の移籍後も勝てる工夫はすべきである。しかし、お金でエースを買えない以上基本的にはお金よりエースに価値があることは間違いない。60億の価値がエースを失う事より高いと言えない以上60億のために松坂投手再雇用の義務などはない。
最後に一応誤解を招かいないように言っておくが、松坂投手の貢献度が低いとか、再雇用する価値が全くないとは思っていない。ただ、3年間投げていない投手に一軍契約と登録枠を割くことが戦略として見合わないというだけだ。
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- スポーツ報知,2018年1月28日7時0分,【ロッテ】涌井残留決定 海外FAも納得のオファー得られずメジャー断念参照,2024年1月24日最終アクセス ↩︎