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野球界における未成年の選択への配慮というのは難しい課題である。

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今晩は。新旧の仕事の引継ぎに追われるtthgです。

来月から成人の年齢が18歳に引き下げられる予定だが、成人として扱われるからには責任が伴う。逆に言うと未成年の契約行為は親権者が取消す権利を保有しているように、未成年の選択には当事者が適切な判断能力がない事へ一定の配慮がなされている。今回は、野球の指導に置いて未成年の判断能力の未熟さに配慮する事について書きたい。

tthgは高校野球で投手が投げ過ぎて肩肘を壊す姿をトコトン見たくない。この年代で試合中や練習における不慮の事故以外の故障は基本的に0にすべきと思っている。しかし、プロでは話が別である。下記の動画で下柳氏が「このまま首になるか、トコトン投げ込んで壊れて止めるかか?」という2択を迫られて、後者を選んだ結果、プロでも驚くような量投げ込む中で技巧派への転向の糸口を掴み、44までの現役を続けた事が紹介されている。


そもそも「壊れて辞める」が選択肢として登場している以上このやり方は多いに怪我のリスクがあった筈だ。だが、tthg的にこの下柳氏の選択が悪いとは思わない。それを薦めた指導者側も問題ないと考える。下柳氏の肩肘は壊れなかったが、仮にそれが壊れたとしてもその判断は変わらない。それは、プロで中堅の年代に入り後がない投手ともなれば、ノーと言う事ができるからだ。仮にその年代になってもノーと言えない選手なのだとするとそれは自己責任である。そして、何もしなければ首という現実を変えるために、故障のリスクを負うというのはリスクとリターンが見合った合理的な判断でもある。(既に実績もある投手がいきなり無茶な投げ込みをしてシーズンを棒に振るとかは止める必要はあるけど。)


だが、これが高校生の指導だったら多いに反対する。なぜかというと高校生に対する指導者の立場は極めて支配的であり、簡単にノーとは言えないからだ。この事情は未成年である高校生の選択とプロの中堅選手では全く違う。「本人が望んだから」という安易な言い訳を隠れ蓑にして無茶な練習や連投を許容してはいけない。数年前に佐々木朗希投手か予選で欠場した際、投げる投げないが大きな話題を呼んだが、この例からも分かるように甲子園という存在があまりに重い故、一発勝負のトーナメントでの勝利に周りが異様に拘り「多少痛くても投げろ」という別の圧力もある。本来大人がこうした圧力から高校生を守る責任があるのだが、試合における球数制限すらまともにできない高校野球にそうした事が機能しているとは言い難い。

一方で、今のシステムで高校生の選択を間違った方向に誘導しないようにする事は極めて難しい。一発勝負で勝ち負けに異様な付加価値のある大会では指導者、学生共に勝利の魔力に負けやすい。仮にそれに抗おうとしても高校側にリソースが足りなさすぎる。例えば、試合で一週間に120-130以内の球数制限をしたとしても「練習でどれぐらい投げさせるべきか」「投げさせる時にどのようなフォームなら故障が回避しやすいか」「球種は制限すべきか」「成長途上における骨格の変化への配慮とはどうあるべきか」「栄養と負荷と休養のバランスはどうあるべきか」など考える事は一杯ある。

プロの一線で戦える身体の土台を作るトレーニングは当然ギリギリまで追い込む事も必須であり、単に負荷を弱めれば良いわけではない。この辺の話はプロの側でもどれだけ知見が蓄積されているのか怪しい所であり、地方の私立高校レベルで名物監督とそのスタッフだけで蓄積できるものではない。本来的にはプロの側が組織として取り組み科学の力も借りながら進めて行くべき事柄である。しかし、現状はプロを目指す選手の育成まで学生野球に丸投げである。それでは、プロを目指す高校年代の選手の選択に合理的な配慮をする事は極めて困難である。野球界における未成年の選択への配慮というのは難しい課題である。

本日も最後までお読み頂きありがとうございました。

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