KKドラフトの悲劇から考えるドラフト改革~Number937号を読んで~
Number937号にKKドラフト(ご存じない方はリンクをクリックしてください。)について桑田さんのインタビューが掲載されたので読んでみた。KKドラフトに関しての桑田さんが語ったことは概ね以下の通り
・巨人との密約はなかった。
・早稲田には本心から進学したかった。
・ただし、巨人からの指名があれば行きたかった。
・巨人に行きたい気持ちを巨人側に伝えたことはない
・ただし、自分が巨人ファンだったことは巨人が知っていた
・巨人が以上の状況を忖度して強行指名した。
私が気になった点は「巨人に指名された場合のみプロ入りを考えていたことをなぜ隠したのか」という点である。その点について桑田さんは「高校進学の際、PLに行くと決めたら、周囲の大人からひどい扱いを受けたこと」をあげている。どうも他の高校に進学すれば、桑田さんの学校の野球部員全員をその高校に入学させるというオファーがあったらしい。そっちに行けば友人が進学できるのに自分しか進学できないPLへいくのは「裏切り」であると罵られたらしい。その経験から「大人を信用できない」と桑田さんは思ったようだ。それが、ドラフト時に本心を隠し続けた理由とのことである。正直この内容だけでは正直この中学の経験とドラフト時の行動のつながりが良く分からない。
しかし、「巨人ファンであることを巨人が知っている状況で、早稲田進学と言い続けたら、他球団が指名回避して巨人の単独指名があるかもしれない」という思いがあったと仮定すると腑に落ちる。中学の経験から「自分の思いをストレートに話すと大人はそれを汚い方法で利用する。本心を隠して、汚い大人を利用して自分の夢を実現するほうが良い」と考えたとすれば合点がいく。
また、このインタビューの冒頭、桑田さんは「密約はあったのか」という問いに対して「密約とは何か」と質問している。その質問に記者が「密約とは早稲田を隠れ蓑にして、他球団を指名回避させて、巨人に入るという巨人側との約束」という内容の回答すると、桑田さんは「それはない」と応答している。うがった見方をすると「巨人側との明確な約束はないけど、忖度させるような状況をつくる意図はあった」と読める。
これを読んで一番感じたことは、ドラフトには「18歳の少年を大人の都合で情報戦で振り回す悪しき制度という側面がある」ということだ。球団が情報戦を仕掛けてこない状況だったら、桑田さんもわざわざ本音を隠すことはなかっただろう。球団が自分の本音を利用する状況が全く想像できなければ、本音を隠す意味がない。事実巨人側はドラフトまで桑田さんの指名を隠して清原さんを指名するかの如くふるまっていた。巨人はドラフト直前に「ライオンズが桑田指名」という怪情報をつかんで翻意したともいわれている。いずれにせよ大人の事情による情報戦がKKドラフトの原因の一つであることは間違いない。
プロ志望届ができて「隠れ蓑作戦」は使えなくなったが、いまだに「抽選」が存在するために、「どこが誰を指名する」という情報が新聞紙上に毎日のように掲載されている。「指名する」というスカウトの言葉を反故にされて傷つくドラフト候補生たちがいまだに多くいるという状況は改善すべきである。
改善案として、ドラフトの完全ウエーバー制と、指名拒否者への10年間指名凍結を提案したい。情報戦は「抽選」が一番の原因だから、抽選がなくなれば、情報戦の意味が半減する。また、「どうしても意中の球団に行きたい」という候補者側の意向も関係するので、指名拒否の代償を高く設定すれば、候補者側も情報戦をしなくなる。ただし、意中の球団いけないという制度が即メジャーの促進につながりかねないので、先日提案したFAの5年への短縮をセットで導入したい。「頑張れば意中の球団にいける」というインセンティブがあれば、候補者側も指名球団に関心が薄くなるし、逆指名された球団もプロで通用するか確認した上で取れるメリットもある。指名拒否のリスクがなくなれば、全球団安心して指名できる。ウエーバーであれば戦力の均衡化も図れる。
かつて情報戦が大得意だったライオンズのファンが言うのもなんだが、不毛な情報戦で才能豊かな若者を傷つけることは野球界にとってマイナスでしかないことだけは事実だと思う。
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“KKドラフトの悲劇から考えるドラフト改革~Number937号を読んで~” に対して2件のコメントがあります。
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桑田、清原のドラフト時代は現在のようなプロ志望届を提出しない選手はドラフトでは指名しない制度は存在しなかった。大学進学選手は基本プロ志望届出はしないわけで、プロ志望届を提出すれば、特定球団を指定しても他球団も指名する。清原、桑田ドラフトは現行ルールで解決されたと言っていい。ドラフト完全ウェーバーにすべきだが、その前にドラフト交渉権譲渡を組み入れた完全ウェーバーにすべきである。例えば今年の西武は楽天の1位指名交渉権を頂く、昨年岸を獲得、翌年ドラフト交渉権譲渡というながれ。ちなみにAランク選手はドラフト1位指名交渉権譲渡、Bランク選手はドラフト2位指名の交渉権譲渡 でCランクは交渉権譲渡なし。金銭補償は現年俸の50%、あとは交渉権譲渡。人的補償はなくすという考え。今年の西武はウェーバから7番目と9番目に指名できる。楽天は最初の指名が18番目ということになる。
コメントありがとうございます。
KKの時みたいに大学進学を隠れ蓑にすることはできませんが、例えば抽選での競合を回避するために〇〇を指名すると言っておいて他を指名する。という駆け引きは存在します。そうした情報戦に未来ある若者を振り回すのはやめたほうがいいと思います。
ウエーバーでドラフト交渉権を譲渡するのは良い案だと思います。