データで考える最適戦術~書評「デルタ・ベースボール・リポート1」~

お品書き

・本書の特徴
・ヒットエンドランは左打者で仕掛けるべき
・ファースト・サードの最適守備位置
・最強の配球術
・変化球は曲がりの大きさより緩急

・本書の特徴
正直内容を理解することが難しい本。セイバーメトリクスの手法で色々なデータを用いて野球界の様々な事象を解説しているが、書きぶりが学術論文のようで万人受けする本ではない。ただし、内容自体は面白いので、普段論文を読み書きしている大学院生特に理系の大学院生で野球ファンという方は読んで損はない本だと思う。正直文系の私には理解することが大変だった。以下本書の内容から私が考えた戦術を書きたい。

・ヒットエンドランは左打者で仕掛けるべき
本書の40Pから「状況に応じた打撃はどこまで可能か」が論じられているが、本章の内容で面白かったのが、「打球方向は引っ張りに偏る」という点である。大まかに言うと普通に打つと「引っ張り」:「流し打ちで4:1位」に偏る。右打者が一番流し打ちを意識したであろう無死2塁の場面でも「引っ張り」:「流し」は32:25と引っ張りに偏る。以上のデータを踏まえると、1、2塁間に飛ばすことが重要なヒットエンドランは左打者で慣行するほうが効果的と言える。
もっとも、このデータだけでは、右打者が「意図的に」流した場合にどの程度打球方向を変えることができるのかは不明である。(上記の無死2塁のうち意図的に流そうとした打席がいくつあるか分からない。)もしかしたら意図的に流すよう指示すれば左打者と同等の成功率を残せる可能性はあるが、少なくとも、右打者にヒットエンドランを指示する場合は「流し打ち」を明確に指示して意識付けする必要がある。また、自然な打ち方と違う打ち方をするのだから、技術面で得手不得手が存在するはずなので、各打者の流し打ち技術がどの程度なのかを把握しておく必要があるだろう。
いずれにせよ、ヒットエンドランは左打者のほうが細かいことを考えなくて良いので仕掛けやすいことは間違いない。

・最強の配球術
本書の119Pから「三次元的に配球を検証する」という章があるが、本章では「前の球と比較して、打者からの距離が遠い球ほど、安打になりにくい」という点が注目に値する。平たく言うと「インコース高めの次のアウトコース低めは打たれにくい」ということだ。というと普通だが、本章での「距離」とはコースだけでなく、「速度」も考慮に入れている。同じコースでも150の球と110の球はおなじ「距離」とはみなさない。110の球のほうが打者から「遠い」とみなして計算している。具体的には1キロで12センチ距離が離れていると換算して、データをだしている。そのうえで、前の球より距離が離れていればいるほど打ちにくいというデータがでている。とすれば、理論上、内角に速球系のボール球を投げて、外角にできるだけ遅いチェンジアップを投げるのが最強の配球ということになる。もちろん机上の空論でそう単純な話ではないことは承知しているが、コースだけではなく、緩急も含めて前の球との「距離」をできるだけとれるように工夫するという考え方は頭いいれておいて損はない。

・変化球は曲がりの大きさより緩急
上記のように球の「距離」という視点から考えると、同じ球速で距離を変えようとすると、限界がある。ストライクゾーンの中で勝負すると、コースによる距離の変化は最大78センチ。対して球速による距離の変化量は10キロで120センチ。そう考えると、変化球は変化量よりも球速の変化すなわち緩急を第一に考えるべきである。少なくとも、一つは遅い変化球である、チェンジアップ、カーブ、パームなどを覚えておくべきである。

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