【書評】井端弘和著「守備の力」

今晩は。代休だが、子供を病院に連れて行くなどしてあまり自分の時間のなかったtthgです。

今日は、先日読了した井端弘和氏の著書「守備の力」について。この本は井端氏がまだジャイアンツで現役だった2014年に発売されたもので、井端氏のそれまでの野球人生を振り返る内容となっている。井端氏の中では「自分は守備の人」という強い思いがあるようで、「守備の重要性」を強調した本になっている。その考え方が最も端的に表れているのが下記の記述である。

頭で考える以前に、体がスムーズに反応して動けるというのがプロの動き、内野手の動きなのだ。

考えなくても体が動くような守備ができれば、打撃を考える余裕ができ、配球や状況への目配りもできるようになって、もっと数字がよくなるだろう。誰かにそういわれたわけではないが、そんな考え方をもっていた。

(井端弘和著「守備の力」光文社新書P131)

この指摘自体はもっともなのだが、井端氏がこれを言うのは説得力に欠く。この記述は2001年にレギュラーを掴んだ後の話として紹介されている。井端氏のレギュラーへの道のりを考えると守備の人が上記のような考えでやっていてもレギュラーは取れないという真実が見えてくる。



井端氏は本書の別の個所でレギュラー取りの経緯について下記のように語っている。

この年(筆者注:2000年のシーズン)はショートを中心に、二塁手、三塁手もやって九十二試合に出場し、規定打席には足りなかったが、ともかく打率三割もクリアした。

(井端弘和著「守備の力」光文社新書P95)

少し補足すると2000年シーズンのドラゴンズは将来を嘱望される福留選手がショートのレギュラー候補だったが、守備に難があり外野に回った。そこに井端氏が起用されるようになり2001年には本格的にショートのレギュラーになった。一つの見方をとしては守備に難のある福留選手に代わり守備が良い井端氏がレギュラーになったいうことができる。

この見方は一面の真実ではある。本人としてはレギュラーになった後2004年ぐらいに守備を考えなくてもよくなったらしい(本書P131参照)が、2000年時点で守備が壊滅的だったら打力のある福留選手の代わりにレギュラーにはなりえない。本書でも、試合に出るために2000年のキャンプで徹底的に守備を磨いたエピソードが紹介されている。(本書P85-86参照)それが実って2000年時点でプロのレギュラーレベルの守備力が備わっており、それがレギュラーへの道を開いたことは間違いない。

しかし、レギュラーになれた本当の理由は守備ではない。むしろ2000年に3割打ったことの方がレギュラーを確定させる核心的な理由だったと考えるべきだ。今のライオンズで永江選手が二軍なのは源田選手に比べて圧倒的に打力で劣るからだ。井端氏のようにユーティリティからスタートしてレギュラーになった外崎選手がレギュラーになれたのは、2017年後半に2割台後半の打率と二桁本塁打を見込めるパフォーマンスを見せたからだ。逆に同じユーティリティでも熊代選手は打力に問題がありすぎてレギュラーなんて夢物語である。

これらの事実を踏まえれば、井端氏がレギュラーになったのは最終的には打撃力のおかげと考えるべきだ。2000年に3割打てなければ永江選手や熊代選手のようになった可能性は極めて高い。井端氏が永江選手のような打力だったら、2000年時点で明らかに打力で上回り、ポテンシャルもある福留選手にもう少しチャンスを与える選択がなされたはずだ。あくまでも「3割打てて守備力がある井端選手」がいたから福留選手のコンバートがあり、井端氏にショートのポジションが与えられたのだ。

井端氏としては、守備で食べていくという意思の元、2000年のキャンプでノック付けの日々を送ったことがレギュラー取りに大きく貢献したという印象が強いので「守備」に力点を置いた本書を書いたのだろう。しかし、その時点で「プロで3割打てる打力」が備わっていたという事実も守備と同等に重要な事実だ。特に競う相手が福留選手だったことを考えれば尚更守備だけの選手ではレギュラーは厳しかった。

井端氏の言うところの「守備で頭を使わなくても良いレベルに至ればば打力は向上する」理論は元々打力に長けている選手にこそ向いている。井端氏はその自覚はないようだが、打力に問題レベルのセンスがあったから守備を磨いてレギュラーになったというべきだし、外野に転向した後の福留選手などはもっとわかりやすいその例だ。二軍で悪戦苦闘している守備に自信のある選手が、本書のタイトルや内容をあまり深く考えずに鵜呑みにしたら、レギュラー取りなどあり得ない。レジェンドグラスの井端氏の著書だけに注意が必要な書である。

本日も最後までお読み頂きありがとうございました。

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